中京大学社会科学研究所日台共同研究シンポジウム

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■■2012年、東アジアにおける日本と台湾
■■―台湾史研究の現段階と今後の課題―
 
日 時■2012年7月1日(日) 09:00〜17:00
場 所■中京大学名古屋キャンパスセンタービル・ヤマテホール アクセスは→こちら  
主 催■中京大学社会科学研究所 中京大学社会科学研究所台湾史研究センター
参加費■無料
 
プログラム■ 開催趣旨は→こちら
 
問題提起
 台湾史研究三十年の経験からの2012年認識
  檜山 幸夫氏(中京大学社会科学研究所長)
 
第一セッション 日台関係の現段階とこれからの展望―日華国交断絶から40年―
 2012年の東アジア国際環境と台湾における日本研究―政治史の側面から―
  川島  真氏(東京大学大学院准教授)
 2012年の東アジア国際環境と台湾における日本研究―文化史の側面から―
  松金 公正氏(宇都宮大学大学院教授)
 司 会  所澤  潤氏(群馬大学大学院教授)
 
第二セッション 日本統治下台湾の官僚と日本人
 台湾総督府の官僚と在台日本人社会
  駒込  武氏(京都大学大学院准教授)
 台湾の震災と台湾総督府官僚―被災調査報告の共有化と被災記録の伝承―
  東山 京子氏(中京大学社会科学研究所特任研究員)
 日本統治下台湾における医師社会の階層性と学歴主義
  鈴木 哲造氏(国立台湾師範大学博士後期課程)
 司 会  大友 昌子氏(中京大学現代社会学部教授)
 
第三セッション 台湾の近代化と台湾人アイデンティティの形成
 日本統治下における台湾人社会的リーダー階層
  呉 文 星氏(国立台湾師範大学教授)
 清国人・日本人・中華民国人だった一人の台湾人の記録
  中田 敏夫氏(愛知教育大学教授)
 台湾に現れた3つの郷土教育―郷土概念の相違に注目して―
  林 初 梅氏(大阪大学大学院准教授)
 司 会  酒井恵美子氏(中京大学国際教養学部教授)
 
第四セッション 日本と台湾における戦没者慰霊の国際比較
 台湾の忠烈祠と日本の護国神社にみる戦没者慰霊の国際比較
  蔡 錦 堂氏(国立台湾師範大学准教授)
 戦没者追悼と慰霊の空間―都市の招魂祭をめぐる諸問題―
  本康 宏史氏(石川県立歴史博物館学芸課長)
 司 会  檜山 幸夫氏(中京大学法学部教授)
 
総括討論
 
申込み■
 ハガキまたはFAXにて、?シンポジウム参加希望 ?氏名(ふりがな必須)・住所・電話番号(当日連絡のつくご連絡先)を明記し、下記の住所またはFAX番号へ事前にお申し込みの上、お越し下さい。
 6月23日(土)必着  ※受講票の発送はありません。
 中京大学社会科学研究所 〒466-8666 名古屋市昭和区八事本町101-2 FAX052-835-2613
 (名古屋市営地下鉄鶴舞線名城線『八事』駅下車 ?番出口すぐ)
 
開催趣旨■
1972年9月19日午後9時5分、外務大臣大平正芳が出迎える羽田空港に、特派大使椎名悦三郎をはじめ綿貫民輔・川上為治などの衆参両院議員と中江要介アジア局参事官等外務省官員など26名が飛行機のタラップを降りてきた。彼らは、?介石の中華民国政府に国交断絶を伝えるために台北に派遣された特使一行であった。ここに、日本政府と中華民国との外交関係(日華関係)は消滅し、以後、日本と台湾との関係(日台関係)となる。つまり、2012年は日華国交断絶から40年、日台交流40年の年にあたる。
 
椎名特使が帰国してから6日後の25日、同じ羽田空港から田中角栄首相以下大平外相や二階堂進内閣官房長官など随員49人を乗せた日航特別機が北京空港に向けて飛び立っていった。9月29日、日中共同声明が調印されここに日中国交回復が達成されることになる。それより前の2月21日、ニクソン米大統領周恩来首相の出迎える北京国際空港に降り立っていた。中共敵視政策を採っていた日本政府に、大きな衝撃を与えたニクソン訪中であった。かかる国際政治の激変は、その一年前の1971年10月25日に、国連総会において中華人民共和国政府に代表権が認められ中華民国政府の国連追放が決議されたことによるが、それは日本外交の敗北であったばかりではなく、霞ヶ関外交の破綻をも意味し、これ以降、日本外交は対中外交における主導権を失っていく。
 
しかし、日台関係は日華外交断絶にもかかわらず、経済・文化をはじめとして却って緊密な関係となり相互交流は大きく発展していった。その結果、日台関係両国民は相互にもっとも友好的な関係を築きあげることになっていく。だが、近年の東アジア国際社会における政治動向は、これまでの日台友好的関係に重大な影響を及ぼす可能性を示唆してもいる。危惧されるのは、戦後の台湾史研究が辿ってきた、政治と学問との関係にある。それでなくとも、歴史学という学問領域は政治的な影響を強く受けやすい分野であるからだが、なかでも台湾史研究という領域はさらに純粋学問的研究環境条件を維持していくことが容易ではない分野でもある。
 
このため、これまでの40年の日台交流の歴史を踏まえ、台湾史研究のさらなる発展を如何に促していけるかを模索することが本シンポジュームを企画した第一の目的である。第二の目的は、本学社会科学研究所が台湾史研究の基礎となる台湾総督府文書についての研究を始めてから30有余年間に蓄積され達成されてきた研究成果を踏まえ、研究の現段階と今後の展望を描いていくことにある。第三の目的は、日台間の共同研究の質的向上と深化及び社会的貢献にある。本シンポジュームは、今年度実施されている台湾政府の教育部が支援する教育と研究プログラムをより発展させたものとして企画したものであるが、それはこのプログラムが国立台湾師範大学の教員が本学に派遣され本学の大学院生と学部生に講義を行うことと、今夏台湾の国史館台湾文献館において本研究所と共同で台湾総督府文書目録編纂事業を行うという画期的な事業であることから、その基盤となっている研究状況を広く提供していくべきであると考えたことにある。
 
かかる認識を前提に、第一セッションでは今年が日華国交断絶と日中国交回復から40年という節目にあたることから、改めて「日台関係の現段階とこれからの展望」として2012年の東アジア国際環境を踏まえて、台湾における日本研究について川島真氏が政治史の側面から、松金公正氏が文化史の側面からそれぞれ現状と将来的展望を論じていく。
 
日本統治下台湾の統治実態を明らかにしていくためには、統治政策を担ってきた行政・司法・技術官僚から教師・技師・医師等といった実務者の実態分析が不可欠であるため、近年多くの研究がなされるようになってきた。このため、第二セッションでは台湾総督府地方長官であった内海忠司と日本人社会を論じてきた駒込武氏が「台湾総督府の官僚と在台日本人社会」について、東山京子氏が台湾において頻発していた自然災害に対する台湾総督府の対応について、地震災害を事例に台湾総督府官僚が防災という観点から如何に取り組んできたのかを技術官僚が行った被災調査報告を事例に震災情報の共有化と被災記録の伝承を中心に論じようとするものであり、さらに鈴木哲造氏が日本統治期に形成されていった台湾における近代医療衛生制度について、医師社会の階層性とそこにおける学歴主義という視点から医師社会の実態を明らかにするものである。
 
第三セッションの「台湾の近代化と台湾人アイデンティティの形成」では、交流協会から飜訳が出された『台湾の社会的リーダー階層と日本統治』の著者である呉文星氏が戦後の台湾社会の発展に大きな役割を果たしてきている日本統治期に形成されていった近代的台湾人社会的リーダーの問題について、中田敏夫氏が清朝統治期・日本統治期・中華民国統治期という異なる三つの支配者に治められた一人の台湾人を事例にまさしく「台湾人」とは何かを問い、林初梅氏は台湾の民主化の原点ともなる台湾アイデンティティを論じていくためにはどうしても解明していかなければならない台湾における台湾史研究の基礎となる郷土教育について論じていくものである。
 
近代戦争を担う戦争指導者にとって重要な政策課題に、国民統合と国民の戦争動員があり、そのなかの一つに戦没者の慰霊顕彰がある。第四セッションは、この国民国家における戦没者慰霊の問題について、蔡錦堂氏が台湾の慰霊施設である忠烈祠と日本の護国神社を比較しながらこの問題の原点に迫りそこから見えてくる国際的共通性と国家的個別性を追究し、本康宏史氏が都市の招魂祭を事例に戦没者追悼と慰霊の問題について論じていく。
 
これらのセッションを通じて、それぞれの研究の現段階と今後の課題を明らかにしていくと共に、今後の課題として、「台湾」という空間が歴史的に抱えている宿命的国際性に規定されている「台湾史研究」が、日本・中国・オランダ・スペインといった各国史との関係のなかで成立していたという台湾史の国際性を踏まえ、今後の日本における台湾史研究の構築といった命題にどのように取り組んでいけるのかについて検討していきたい。  

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