日本アーカイブズ学会2012年度第1回研究集会「医療をめぐるアーカイブズ」

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日 時■2012年11月25日(日) 13:00〜17:00
場 所■神奈川県立公文書館大会議室 アクセスは→こちら  
主 催■日本アーカイブズ学会
参加費■無料、事前申込不要
テーマ■医療をめぐるアーカイブ
 
報告者■
   芹澤良子氏(国立国会図書館
「医療史研究と史料−ハンセン病対策の事例から−」
   鈴木晃仁氏(慶應義塾大学
「昭和戦前期精神病院の症例誌について」
   コメント:石原一則氏(神奈川県立公文書館
 
開催趣旨■
記憶や情報を伝えるために守らなければならない数ある記録のなかで、特に医療をめぐる記録は、人間の「生き死に」や「生き様(ざま)」に直結するものであるという点で、他とは違った独自の意味をもっている。また“医療”に関する現場は、人々が検診・診察・治療に訪れる病院、社会政策としての医療・衛生行政、医学研究のための研究機関など多様な形で存在し、様々な人々が“医療”という行為に関わる場である。そこでは、病院のカルテ、調査されたデータ、実験で得た結果など、実に数多くの種類の記録が生み出されている。それらは今までも、そしてこれからも私たちの社会に不可欠なものである。
 
時間の経過の中で環境や社会が変化するのと同じく、医療・衛生の状況も変化する。例えば既に制圧(コントロール)された病気や感染症に関する記録についての人々の関心は薄いかもしれない。しかし、昨今の“マラリアの逆襲”と“Roll Back Malaria”の動きからもわかるとおり、病気の歴史はときに繰り返されようとするし、最新の感染症対策に過去の経験が生きることもある。また、ある疫学者は、ある感染症に関する過去のほんの数年分の疫学的な記録があれば、その感染症に対する今後の対策を研究できると話し、別のある医学者は、地球温暖化によって予測される衛生や感染症の問題を検討するとき、ハエとカの記録があると大変に有効だと言う。しかし、現在、そのような疫学的な記録も、ハエとカの記録も、少なくとも日本では系統的に整備されていないのだ。
 
以上のようなことからも、私たちは医療をめぐるアーカイブズへの関心を高める必要があるのだが、現在、この分野に関するアーカイブズの状況は必ずしも整備されているとは言えない。それは、個人情報の取り扱いなどをはじめとする、多くの困難な問題を抱えているからである。しかし、私たちは未来の疫学者や医学者たちに記録を提供する準備を決して怠ってはならない。
 
日本アーカイブズ学会では、こうした問題意識から、2012年度の第1回研究集会のテーマを「医療をめぐるアーカイブズ」とした。まず、芹澤良子氏にハンセン病対策の観点から、続いて、鈴木晃仁氏に精神医療の観点から、医療とアーカイブズをめぐる諸問題についてご報告をいただく。その上で、石原一則氏に、医療をめぐる記録の保存と利用の問題について、自治アーカイブズの立場からのコメントをお願いする。
 
この研究集会が多くの皆様に関心を寄せていただく機会となることを願うとともに、本学会としては単にアーカイブズの問題としてだけではなく、アーカイブズ学的問題としての喚起を目指したい。医療をめぐる歴史的なアーカイブズを検討するという、アーカイブズ学としての問題提起は、アーカイブズ上に存在する他の諸問題にもきっと良い影響を与えるだろう。そしてそれは、未来の“Rollback Medicine”の一助となるはずである。様々な立場からの活発な議論を期待したい。
 
問合せ■
日本アーカイブズ学会事務局 サイトは→こちら
〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 国文学研究資料館 加藤聖文研究室気付
E-mail:office[※]jsas.info  [※]を半角アトマークにしてご利用下さい。  

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